塔婆はなぜ立てるのでしよう
塔婆はインドの言葉「スッパー」の音をうつしたもので、卒塔婆ともかきます。謡のなかに出てくる「卒塔婆小町」などでよくご存知のことと思います。お釈迦さまがおなくなりになられた後、そのお骨が当時インドで栄えていた八大国に分けて葬られましたが、出家されたときの髪と、火葬の時ののこりの灰とで合計十基の塔が建てられ、りっぱなご供養がいとなまれました。塔婆はこの古くからの伝えにもとづいて、亡くなったかたの追善供養のために建てられるものです。
塔婆の形の大小や材料のちがいはありますが、だいたい上から空(くう)、風(ふう)、火(か)、水(すい)、地(ち)の五大をあらわした円や四角などに刻まれています。これは大きくは宇宙を、小さくはお釈迦さまもふくめてわたしたち人間のからだを、さらには、そのわれわれと宇宙との一つであることのあらわれで、塔婆をたてることはこの意味では広くは仏教の徳をしめすため、せまくは仏身を造立して祖先を供養する志をあらわすのです。
五重の塔の心礎のなかにはみな仏舎利をおさめてありますが、日本語だと思って使っている「塔」がインドの言葉そのままであることも、塔や塔婆が古くからわたしたちの生活にとけこんでいるためであると思われます。
◎罪ありて非を知り、過を改めて善を得ぱ、罪、日に消滅して、後にかならず道を得るなり(四十二章経)