手をあわす心

お彼岸にはなぜ「おはぎ」をそなえるのでしよう

「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、一年のうちでは、最も気候のよいのがこの春秋の彼岸の頃であり、このお彼岸には祖先の墓参りをいたします。

現在十二ある日本の祝祭日のうち、仏教の行事を起源としているものは、彼岸の中日にあたる春分の日と秋分の日だけなのです。彼岸とは文字通り"彼の岸"であり"さとりの世界"を指し、此岸すなわち"迷の世界"に対するものです。

仏教の実践にはいろいろありますが、その中でも"布施""持戒""忍辱""精進""禅定""智恵"という六波羅密と呼ばれる六つの実践は、さとりの世界に到達するための大切な項目でした。

一年中これを実践するわけにはいかないが、せめて気候のよい彼岸の各七日づつぐらいは実践しようというのが彼岸という行事のはじまりなのです。そして、お墓にそなえる"おはぎ"を中心としたごちそうは、自分の持っている大切なものを他の人びとに少しでも多く与えようとする"布施行"の実践としてはじまったものでして、決して死者の霊だけに供えたものではありませんし、精進料理を作るのも"不殺生戒"を実践する努力(精進)のあらわれなのです。

◎比丘よ、執着するときはすなわち悪魔に縛せられる。執着なきときは、すなわち悪しきものより解脱する(相応部経典)