「同行ニ人」とはどういうことですか
それはいつも弘法大師と一緒ということです。のどかな春の野辺をいく四国八十八ケ所のお遍路さんの姿のなかに、深い信仰を持つ人のよろこびをみることができます。
昔は今とちがって、奥深い山道にわけ入り、底知れぬ谷を渡って巡礼の旅をつづけることは容易なわざではありませんでした。だから時には「旅に病んで、夢は枯野をかけめぐる」というようなこともあったでしよう。そんな独り旅のお遍路さんの笠に書かれたのがこの弘法大師がいつも一緒にいて下さるという心もちをあらわした「同行二人」の四字です。弘法大師だけでなく、他の宗の宗祖がたも、仏さまも、いつも一緒について下さる同信、同行ということです。
大衆の中の孤独といわれる現代人が、孤独におちいってしまったのは、この同行二人の心を忘れたからではないでしようか。全ての人が心の奥底で結ばれた共通の友人を持っていれぱ、ひとりでに世は情の社会となるものです。
よきにつけ、悪しきにつけ、わたしたちは決して一人ではありません。どこかに信じあえる友がいる。そう考えただけでも心があたたまるものです。同行二人(どうぎようににん)実にいい言葉ではありませんか。
◎能く信を守ることあれば、家内安和し、福自然にいたる。神のさずくるに非ざるなり(阿難分別経)